なぜ子どもは大人より発音がうまくなるのか?臨界期とは違う「音の聞き分け」の話

 子どもに英語を習わせているご家庭でよく耳にするのが、「うちの子、発音だけは変に良い」という驚きの声です。文法も単語もまだ怪しいのに、なぜか音だけは自然。実はこれ、単なる思い込みではなく、聞き取りの仕組みそのものに理由があります。

 子供英会話家庭教師ビバイ(bebai)のKOKIです。今回は、「なぜ子どもは発音を習得しやすいのか」について、臨界期仮説とは少し違う角度からお話ししてみたいと思います。

この記事でわかること

  • 赤ちゃんが持つ「あらゆる音を聞き分ける力」の話
  • 母語によって、その力がどう変化していくか
  • 発音の習得において、年齢がなぜ有利に働くのか

赤ちゃんは、あらゆる言語の音を聞き分けられる

 言語習得研究の中に、乳児の音声知覚に関する有名な研究があります。生後半年ほどの赤ちゃんは、世界中のどんな言語の音の違いも聞き分けられる、というものです。日本語にはないRとLの区別も、フランス語特有の鼻母音も、この時期の赤ちゃんは違いとして認識できるとされています。

 ところが、生後10ヶ月から1歳を過ぎるあたりから、この能力に変化が起こります。周囲で話されている母語(多くの場合は日本語)にない音の違いに対して、次第に敏感さを失っていくのです。これは「知覚的絞り込み(perceptual narrowing)」と呼ばれる現象で、母語の音韻体系に特化していくプロセスだと考えられています。

 つまり、赤ちゃんは生まれつき万能な耳を持っていますが、育つ環境の言語に合わせて、その耳を最適化していくわけです。

「絞り込み」は、まだ完全に固定されていない

 ここで大切なのが、この絞り込みは思春期以降のように完全に固定されてしまうものではなく、幼少期であればまだ十分に柔軟だという点です。

 日本語の音韻体系に絞り込まれ始めた後でも、幼い時期に英語の音に十分な量触れる機会があれば、RとLのような日本語にない区別を、再び知覚できるようになる余地が残されています。これが、「子どもの発音は大人より習得しやすい」と言われる理由の一つです。

 大人になってから英語を学ぶ場合、すでに日本語の音韻体系に最適化された耳を、いわば作り直す作業が必要になります。理屈で「RとLは違う音だ」と理解していても、実際に聞き分けられるようになるには、子どもの時期よりずっと多くの訓練が必要になるのです。

発音指導で大切なのは「聞かせる量」

 この仕組みから見えてくるのは、発音指導において最も効果的なのは、細かい口頭での訂正よりも「正しい音に触れる絶対量を増やすこと」だという点です。

 実際、レッスンの中でネイティブに近い発音のインプットに繰り返し触れているお子さんは、講師が特に発音そのものを指摘しなくても、自然と聞き取りにくかった音の区別ができるようになっていく様子がよく見られます。逆に、耳へのインプットが少ないまま口頭練習だけを重ねても、変化は緩やかになりがちです。

「早ければ早いほど良い」わけでもない

 ここで一つ誤解を避けたいのですが、これは「1歳を過ぎたらもう手遅れ」という話ではありません。知覚的絞り込みが起きた後も、幼少期であれば十分に柔軟性は残っています。焦って0歳から詰め込む必要はなく、大切なのは「その時々で、良質な音のインプットにどれだけ触れられるか」という積み重ねです。

 私自身、大学受験で英語の音を耳で覚えるというより、文字と文法から入った世代です。だからこそ、幼少期に耳から自然に音を取り込めることの価値を、大人になってから痛感しています。

ビバイが大切にしていること

 ビバイのレッスンでは、この「聞き分ける耳を育てる」という視点を大切にしています。バイリンガル講師による自然な発音のインプットを継続的に届けることで、お子さんが持つ本来の柔軟な聞き取り能力を活かせるよう工夫しています。

 言語間距離という壁はたしかに存在しますが、耳の仕組みという観点から見れば、子どもの時期はまだ十分にチャンスがある時期だと言えます。


KOKI


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