「何度直しても、また同じところで間違えてしまう」
英語を教えていると、多くの保護者の方からこうしたお悩みを伺います。子供英会話家庭教師ビバイ(bebai)のYです。今回は、この現象を説明する手がかりとして、言語学者リチャード・シュミットが提唱した「気づきの仮説(Noticing Hypothesis)」をご紹介します。
この記事でわかること
- 「気づきの仮説」とはどのような考え方か
- なぜ指摘するだけでは間違いが直らないのか
- 家庭やレッスンで「気づき」を生み出す関わり方
「気づき」がなければ習得は起こらない
シュミットの気づきの仮説は、シンプルながら重要な主張をしています。それは、学習者が意識的に「気づいて」いない言語形式は、どれだけ繰り返し聞いても、なかなか身につかないというものです。
たとえば、三単現のsを忘れる子どもに、講師が何度も「heのときはsをつけるよ」と口頭で伝えたとします。しかし、その子ども自身が「自分は今、sを抜かしている」ということに実感として気づいていなければ、指摘は右から左へと流れてしまい、次に話すときにはまた同じ間違いが出てきます。
つまり、間違いが直らないのは、記憶力の問題でも、やる気の問題でもなく、多くの場合「気づき」がまだ起きていないだけなのです。
なぜ「聞くだけ」では気づきが起きにくいのか
大量の英語を聞き流すインプットだけでは、気づきは自然には起こりにくいとされています。理由は単純で、聞き流している間、脳は意味を理解することに注意を向けており、細かい文法形式にまで注意が向きにくいからです。
一方で、自分が話した英語の間違いを、その場でやんわりと言い直してもらう経験、たとえば子どもが「He go to school.」と言った直後に、講師が自然な会話の流れの中で「Oh, he goes to school every day?」と返す、といったやり取りは、気づきを生みやすい関わり方として知られています。指摘するのではなく、正しい形をさりげなく会話の中に織り込むことで、子ども自身が「あ、goesなんだ」と自分で気づくきっかけになるのです。
気づきは「タイミング」と「量」が大切
気づきの仮説が示すもう一つの重要な点は、間違いを一度に大量に指摘しても効果が薄いということです。むしろ、その子が今まさに使おうとしている表現に絞って、少しずつ気づきの機会を与える方が、定着につながりやすいとされています。
会話の流れを止めずに、必要な形だけをさりげなく差し込む。これは、決まったカリキュラムを一斉に進めるグループレッスンでは難しく、その子の発話をリアルタイムで聞きながら調整できる、マンツーマンならではの関わり方です。
よくあるタイプの変化
長期間、同じ文法ミスを繰り返していたお子さんに対して、直接的な指摘をやめ、会話の中で正しい形をさりげなく返す関わり方に切り替えたところ、数週間のうちに、自分から「あ、今の違うかも」と言い直す場面が増えていったケースがあります。
指摘されて直すのではなく、自分自身で気づいて直せるようになったこの変化は、単発の訂正よりもずっと定着度が高く、その後同じ間違いが出てくる頻度も明らかに減っていきました。
バイリンガル講師だからこそ生み出せる「気づき」
私たち講師自身も、英語学習の過程で同じ間違いを繰り返した経験があります。だからこそ、どのタイミングで、どんな形で気づきを促せば効果的なのかを、感覚として理解しています。
ビバイでは、その子の発話を丁寧に聞きながら、指摘ではなく自然な会話の中で「気づき」を積み重ねていくレッスンを大切にしています。同じ間違いが続いていても、それは能力の問題ではありません。適切な気づきの機会があれば、着実に変わっていきます。
保護者の方にお伝えしたいのは、ご家庭で細かく間違いを指摘する必要はないということです。むしろ、正しい言い方を会話の中でさりげなく返してあげるだけで十分です。「間違いを正す」のではなく、「気づきを手渡す」という感覚で関わっていただくと、お子さんも英語を使うことへの抵抗感を持たずに済みます。焦らず、少しずつ。気づきは、その積み重ねの先に自然と訪れるものです。
Y
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