「単語帳をやっているのに、なかなか使えるようにならない」
こういった悩みを持つ保護者の方は多いものです。子供英会話家庭教師ビバイ(bebai)のYです。今回は、語彙習得の分野で広く参照される言語学者ポール・ネーション(Paul Nation)の研究をもとに、単語の覚え方と、特に子どもの英語学習における語彙の増やし方について考えます。
「何語知れば話せるか」という問い
英語学習者が気になる問いの一つに、「どのくらいの単語数を知れば会話できるのか」があります。
Nationらの研究によれば、日常会話の大部分は使用頻度の高い約2,000語で成立するとされています。ただし、これはあくまでも「言葉が通じる」レベルの話です。読む・書く・聞くを含めてある程度自由に英語を使いたい場合は、8,000〜10,000語程度の語彙が必要という分析もあります。
この数字を見て「多い」と感じるかもしれませんが、重要なのは語彙数そのものより、覚え方と使われ方です。
語彙の「深さ」と「広さ」
Nation の語彙習得研究が示す重要な視点の一つは、単語の知識には「広さ(breadth)」と「深さ(depth)」があるという点です。
「広さ」は、どれだけ多くの単語を知っているかという量の問題です。一方、「深さ」は一つの単語について、意味・音・使い方・組み合わせ方など、どれだけ多面的に理解しているかという質の問題です。
たとえば「happy」という単語を知っていても、”I’m happy.”と言えるだけの状態と、”She looked happy when she heard the news.”のように文脈の中で使える状態では、語彙の「深さ」が全く異なります。
単語帳で意味を覚えるだけでは「広さ」は増えても「深さ」が育ちにくく、実際の会話では使えないという現象が起きやすいのはこのためです。
繰り返し出会うことが定着の鍵
Nation の研究では、ある単語が長期記憶に定着するには、異なる文脈で複数回その単語に出会うことが必要だとされています。目安として、10回以上の出会いが定着に影響するという研究があります。
ここでの「出会い」は、単語帳を10回見ることではなく、読んでいる文章の中で、聞いている会話の中で、実際に使おうとする場面の中で、それぞれ自然に接触することを指しています。
この観点からすると、意味を暗記することよりも、英語をたくさん聞き・読み・話す中で同じ単語に繰り返し出会える環境を作ることの方が、語彙の定着には効果的だということになります。
子どもの語彙習得に特有のこと
子どもの語彙習得は、大人とは異なる特徴を持ちます。
大人が分析的に意味を覚えようとするのに対し、子どもは遊びや会話の文脈の中で、意味を推測しながら語彙を吸収していきます。「この単語はどういう意味か」と考えるより前に、何度も聞いて使ううちに自然に身についていく、という過程をたどりやすいのです。
これはNationが強調する「意味のある接触(meaningful encounters)」と一致します。単語が意味を持つ場面で繰り返し登場することが、子どもの語彙習得には特に有効です。歌や絵本、会話の繰り返しが有効とされる理由もここにあります。
家庭でできる語彙の増やし方
Nation の研究が示す「繰り返しの接触」を家庭で実現するには、特別な教材は必要ありません。
お子さんが好きな英語の絵本や動画を、繰り返し使うことが最も手軽な方法です。同じ本を何度も読んでほしがる子どもの行動は、語彙習得の観点からも理に適っています。毎回新しいものに変えるより、好きなものを繰り返す方が、同じ単語に何度も出会える機会を作れます。
また、日常の場面で英語の単語を一言添える声かけも有効です。「これはappleだよ」「今日はraining(雨)だね」といった短い言葉が、意味のある文脈の中で単語に触れる機会を日々少しずつ積み重ねます。
レッスンへの応用
ビバイでは、同じ表現を一つのレッスン内で複数回、異なる文脈で使う機会を意図的に作っています。「この単語を覚えなさい」という指示ではなく、遊びやロールプレイの中で自然にその言葉が出てくる場面を設計しています。
語彙は量より質、そして接触の回数と文脈の豊かさで育ちます。お子さんの英語学習に取り組む際のひとつの判断軸として、「その単語に何度、どんな形で出会えているか」を意識してみてください。
単語の数を増やすことより、すでに知っている言葉を自分のものにしていく過程を大切にしたい、というのがビバイの指導方針にもつながっています。
Y
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