英語を学ぶと日本語がおかしくなる?|カミンズの言語理論
「英語を早くから習わせると、日本語がおかしくなるんじゃないか」
早期英語教育を検討している保護者の方から、このご不安をよく耳にします。気持ちはよくわかります。日本語もまだ発達の途中にある幼児期に英語を加えることへの心配は、自然な親心です。
ただ、この不安に対してはっきりと答えを出してくれる研究があります。カナダの言語学者ジム・カミンズが提唱した「共通基底言語能力モデル」です。
執筆者Wのプロフィール 日本と台湾を行き来しながら育ち、日本語・中国語・英語の三言語を習得。バイリンガル・マルチリンガル教育の最前線を自身の経験と照らし合わせながら、言語間の比較や多言語環境でのの子育てをテーマにした記事を担当。
「2言語は別々のタンク」という誤解
まず、多くの方が無意識に持っている誤解を整理しましょう。
英語と日本語をそれぞれ別々の「タンク」だと考えている方は多いと思います。脳の中に日本語用のタンクと英語用のタンクがあって、一方に注いだ分だけもう一方が減る、という発想です。この考え方に従えば、英語に時間を使うほど日本語が育ちにくくなる、という結論になります。
しかし、カミンズの研究はこの発想を根本から覆します。
2つの言語は、深いところでつながっている
カミンズは「共通基底言語能力モデル(Common Underlying Proficiency、CUP)」の中で、こう主張しました。表面的には異なる2つの言語も、深層では共通の認知的基盤を持っている、と。
イメージとしては、水面から出た2本の氷山を思い浮かべてください。日本語と英語はそれぞれ別々の氷山のように見えますが、水面下では一つの巨大な土台でつながっている。その土台こそが、言語を使いこなすための共通の認知能力です。
この土台には、概念を理解する力、論理的に考える力、文脈から意味を読み取る力、物事を順序立てて説明する力、といった能力が含まれています。これらは特定の言語に属するものではなく、どの言語にも共通して使われる力です。
日本語を深めることが、英語力の土台になる
このモデルが示す重要な含意は、母国語(L1)で育てた能力は、第二言語(L2)の習得にそのまま活用できるということです。
たとえば、日本語でしっかりと「なぜ?」「どういうこと?」と考える習慣を持つ子どもは、その思考力を英語の場面でも発揮できます。日本語で豊かな語彙を持つ子どもは、英語でも新しい概念を速く吸収しやすくなります。日本語で物語を理解できる子どもは、英語の物語も構造として捉えやすくなります。
逆に言えば、日本語をないがしろにして英語だけを詰め込もうとしても、深層の認知基盤が育っていなければ、表面的な暗記にとどまりやすいということです。
「英語をやると日本語が崩れる」は起きるのか
カミンズの研究では、2言語の同時習得が母国語の発達を妨げるという証拠は見つかりませんでした。むしろ、2つの言語を行き来する経験が、言語への意識(メタ言語意識)を高め、どちらの言語も豊かにする可能性が示されています。
ただし一つ、重要な条件があります。それは、両方の言語が十分なインプットを受けていることです。英語だけを与えて日本語の環境を著しく減らすような状況では、母国語の発達に影響が出ることがあります。日本で生活しながら英語学習を加える場合、日本語のインプットが自然に豊富に確保されているため、この点は通常問題になりません。
「いつか英語をやる」より「今、両方育てる」
カミンズの理論が示すのは、英語教育と日本語教育は「どちらか」ではなく「両方」を意識して育てるものだということです。そして、その両方に取り組む時期は、言語への感受性が高い幼少期であるほど、深層の認知基盤を豊かに育てやすい。
「日本語が固まってから英語を」という考え方は、悪意のない誤解から来ています。でも実際には、日本語を大切にしながら英語にも触れる環境を幼少期から作ることが、両言語の力を最も効果的に育てる道です。
W
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