「英会話はできるのに、英語の授業になると急に難しくなった」
小学校高学年や中学校に進む頃に、こうした変化を感じるお子さんがいます。子供英会話家庭教師ビバイ(bebai)のYです。今回は、言語学者ジム・カミンズが提唱した「BICS」と「CALP」という二つの言語能力の概念から、この現象を読み解いていきます。
二つの英語力——BICSとCALP
カミンズは、言語能力を大きく二つに分類しました。
**BICS(Basic Interpersonal Communicative Skills)**は、日常的な会話で使われる言語能力です。挨拶、友人との雑談、買い物や食事での短いやりとりなど、文脈に依存した日常コミュニケーションに必要な力を指します。身振りや表情、状況といった文脈の手がかりが豊富なため、比較的短期間で習得できるとされています。
**CALP(Cognitive Academic Language Proficiency)**は、学習や思考のための言語能力です。教科書を読む、概念を説明する、論理的に意見を述べる、抽象的な内容を理解するといった場面で必要とされます。文脈の手がかりが少なく、言葉だけで意味を理解・構築する必要があるため、習得には時間がかかります。
カミンズは、BICSは2〜3年ほどで習得できるのに対し、CALPは5〜7年かかると述べています。
なぜ「会話はできるのに授業が難しい」のか
帰国子女のお子さんや、幼い頃から英語学習を始めたお子さんに起きやすいのが、BICSは育っているのにCALPが追いついていないという状態です。
英語でコミュニケーションが取れる、英語で友達と話せる——でも、英語の教科書を読んで内容を整理したり、英語で意見をまとめたりすることになると急に難しくなる。これは、二つの言語能力が別々に育つという性質から起きることです。
「話せているから大丈夫」と思っていると、学習場面で突然壁にぶつかることになりやすいのはこのためです。
BICSを土台にCALPを育てる
重要なのは、BICSとCALPはどちらが優れているかという話ではなく、どちらも必要であり、順序として育てていくものだということです。
日常会話でのやりとり(BICS)を積み重ねることで、英語への自信と基礎が育ちます。その土台の上に、少しずつ「考える英語」「説明する英語」の経験を重ねていくことで、CALPが育っていきます。
子どもの英語学習において「まず楽しく話す経験を積む」ことが大切にされるのは、単に楽しさのためだけでなく、BICS→CALPという習得の流れに沿っているからでもあります。
英語学習の「見えない落とし穴」
BICS/CALPの視点で気をつけたいのは、英語力の評価を「話せるかどうか」だけで判断することです。
会話がスムーズにできるお子さんを見て「もう英語は大丈夫」と感じると、その後の学習への投資が薄くなりやすくなります。しかし実際には、教科学習や試験での英語、グローバルな場で考えを伝える力は、BICSとは別の回路で育てる必要があります。
逆に、BICSがまだ育っていない段階でCALPに向けた学習(読解・作文・文法解析など)を先取りさせると、英語そのものへの苦手意識につながるリスクがあります。今お子さんがどの段階にいるかを見極めた上で、適切な次のステップを選ぶことが大切です。
家庭でCALPを育てるヒント
CALPの発達を家庭で支える上で有効なのは、「なぜ?」「どう思う?」と英語で問いかける機会を少しずつ作ることです。
“Why do you like that?”(なぜそれが好きなの?) “What do you think will happen next?”(次はどうなると思う?)
短い答えでも構いません。英語で「考えを言葉にする」経験を積み重ねることが、日常会話を超えた言語力への橋渡しになります。
また、英語の絵本や子ども向けのノンフィクション読み物を読む習慣は、文脈の少ない「文字だけで意味をつかむ」練習として、CALPの育成に効果的です。
レッスンでの取り組み
ビバイでは、お子さんの年齢や英語のレベルに応じて、BICSとCALPのどちらを重点的に育てる段階にあるかを意識しながらレッスンを設計しています。
低年齢のうちは会話の楽しさと語彙の広がりを重視し、小学校中学年以降は少しずつ「説明する・考えを伝える」場面を増やしていきます。英語力を「話せること」だけで測らず、その先にある「学べること」まで見据えた指導が、ビバイが大切にしている方針の一つです。
お子さんの英語力が今どの段階にあり、次に何を伸ばすべきかについて、ご相談があればいつでもお声がけください。
Y
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