英語のレッスン中、子どもが答えを間違えた瞬間に何が起きているか、意識したことはあるでしょうか。
表情が曇る。口数が減る。次の問いかけに答えなくなる。こうした反応は珍しくありません。保護者の方から「うちの子、間違えるのをとても嫌がる」「一度うまくいかないと、そのあとのレッスン全体が沈んでしまう」という話を聞くこともよくあります。
問題は「失敗した」という事実ではなく、その後の心理的な反応にあります。
情意フィルターとは何か
言語学者スティーブン・クラッシェン(Stephen Krashen)は、感情や態度が言語習得に与える影響を「情意フィルター(Affective Filter)」という概念で説明しました。
不安が高い、自己評価が低い、動機づけが低い状態では、このフィルターが「上がった」状態になり、インプットが脳に届きにくくなります。逆に、安心感があり、自分を肯定できる状態では、フィルターが「下がり」、同じインプットでも吸収率が高まります。
大切なのは、情意フィルターは固定されたものではない、という点です。同じ子どもでも、場の状況や直前の経験によって、フィルターの高さはリアルタイムで変動します。
「失敗した後に黙ってしまう」という現象は、まさにこのフィルターが急上昇した状態です。失敗そのものが問題なのではなく、失敗の後にどう着地するかが、そのレッスンの残り時間、ひいては次のレッスンへの姿勢を左右します。
失敗の後に何が起きるか
失敗の後の子どもの反応は、大きく二つに分かれます。
一つは、「もう一回やってみる」方向に向かうケース。間違いを起点として、なぜ違ったのかを自分なりに考え、別の言い方を試みます。このとき、情意フィルターはそれほど上がっていません。
もう一つは、「もう言わない」方向に向かうケース。次の発話を避け、沈黙で場をやり過ごそうとします。フィルターが上がり、インプットもアウトプットも遮断されている状態です。
この分かれ目に何があるかというと、「失敗した後に何が返ってきたか」という経験の積み重ねです。
間違えたとき、相手がどう反応したか。笑われたか、無視されたか、それとも「ああ、こう言うんだよ」と自然に次へ進めたか。こうした記憶が蓄積されて、失敗への反応パターンが形成されていきます。
「立ち直れる」環境をつくる
情意フィルターを意識した環境では、失敗の扱い方が変わります。
間違いを指摘するより先に、「言おうとした」という事実を受け取ります。「○○って言いたかったんだね」と内容を拾い、正しい形を「答え合わせ」ではなく「自然な返し」として提示します。このやりとりのテンポが、子どもに「間違えても続けていい」という感覚を与えます。
マンツーマンのレッスンでは、こうした個別の反応調整が可能です。その子が今どのくらいフィルターが上がっているかを講師がリアルタイムで読み取り、話題を変える、難易度を一時的に下げる、雑談を挟む、といった対応が取れます。複数人を同時に見る環境では、この細かな対応は難しくなります。
家庭でできること
保護者の方が意識できることの一つは、「正しいかどうか」より「言えたかどうか」に反応することです。
「What’s this?」と聞いたとき、子どもが「えーと、あれ、dog?」とおずおず答えたとします。そのとき「惜しい」ではなく「そう、dogだね!」と返す。これだけで、情意フィルターの働き方は変わります。
また、保護者の方自身が「間違えることを恐れない姿」を見せることも効果的です。英語を間違えても笑い飛ばせる大人の様子は、子どもにとってモデルになります。
失敗を「起点」にできるかどうか
英語の習得は、正解の積み上げではなく、間違いと修正の繰り返しです。重要なのは失敗の数ではなく、失敗の後に「もう一回やってみよう」と思える状態が保たれているかどうかです。
ビバイでは、お子さんの情意フィルターの状態を観察しながら、失敗が次への一歩になるよう、レッスンのペースと返し方を調整しています。間違えることを怖がるお子さんの変化を、ぜひ体験レッスンで感じてみてください。
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