英会話の勉強は日本語をダメにする!?幼少期の英語学習の注意点

子供に英会話を学習させる親御さんは近年非常に増えてきました。特に、東京でオリンピックが開催されることが動機の一つとなっているようです。

しかし、「幼少期から外国語(英語など)を勉強させると、日本語の能力が発達しない」という風潮が蔓延っていることも事実です。私は仕事の関係上、多くの教育関係者と意見交換をしますが、やはり意見は分かれます。

英語を子どもに教えるな (中公新書ラクレ) 市川力

ビバイは、キッズ向けの英会話レッスンを提供しているわけですから、当然「幼少期の英語学習は重要だ」という見解です。当然「幼少期からの英語学習のリスク」を無視してはいませんし、それに対して適切な回答をしておきたいと思います。

「日本語が危ない!」の本当の意味とは

英会話学習や英語の早期教育が「日本語の能力を低下させる」もしくは「英語も日本語も中途半端になる」という命題は、一方では正しく、また一方では誤解でもあります。

まず、脳の問題として捉えた場合、外国語(英語など)の早期学習が母国語に影響を与えることはありません。むしろ、母国語以外の言語を学習している児童のほうが、相対的に他の能力も優れていることが多くの論文で発表されているます。事実、外国語の学習は、ネイティブスピーカーでは使わない脳の領域を使用するわけですから、当然の結果とも言えそうです。

また、外国語の学習によって、母国語の理解が深まるという研究結果もあります。

それではなぜ、「英語の学習が日本語をダメにする!」という意見をもつ反英語勉強派が生まれるのか。それには下記の理由が考えられます。

1.英語の学習によって、国語の勉強時間がなくなる

多くの反英語勉強派は上記の理由を指摘しています。たしかに、外国語の習得は非常に時間もかかりますし、生半可な勉強では当然外国語は身につきません。しかしながら、それは単純に時間マネジメントの問題であり、あたかも「英語の学習が日本語の能力の足を引っ張る原因となっている!」とは到底結びつきません。それを言ってしまえば、全ての習い事は日本語の能力の足を引っ張ることになり、国語の学習のためにはスイミングもピアノも辞めて漢字や作文の学習にフルコミットするべきでしょう。

また、国語学習は、幼少期の場合そのほとんどが「親との会話」で十分です。つまり、「親の国語力がないから」というのが、子供の国語力が育たない最大の原因です。

日本語の能力(すなわち国語力)は、単純に国語の勉強時間(もっと言えば、親との会話の時間)が短いだけで、英語学習によって勉強時間を侵食されたわけではありません。英語をスケープゴートにして、国語学習が疎かになっている言い訳をしているにすぎません。

幼少期の人間の脳は、本当に「かわいたスポンジ」です。むしろ、このタイミングで英語学習をしないのは非常にもったいないとすら言えます。この時期は、いくら負荷(精神的なストレスという意味ではありません)をかけても問題ありません。

2.日本語と英語がごちゃまぜになってしまう

この意見もよく聞かれます。いわゆるルー大柴さんみたいな話し方ですね。

事実、私を含めビバイのバイリンガルスタッフたちと話しているときにもこのような現象はしばしば起きます。

しかし、「英語だけ」もしくは「日本語だけ」に限定して会話をしているときにはほとんどこの現象は見られません。

ただ、幼少期のお子様に関して言えば、多少なりとも言語の混在が起きる可能性はあります。それは子供特有のものであり、生涯にわたってそのような現象が起きることはありません。小さいお子様は名詞や動詞のボキャブラリーが少ないわけですから、別の言語で置き換えられる単語があった場合、言語の混在が起きることはやむをえないと言えるでしょう。

3.流暢な英語よりも会話の中身が重要である

「論理力や表現力を鍛えたりすることが重要だ!」この意見には、私も全面的に同意します。英語はあくまでも道具です。多種多様な絵の具を揃えていても、肝心の絵が稚拙であれば意味はありません。英語はあくまでもコミュニケーションツールの1つですから、文章や会話の中身が重要であることは当然です。

しかし、だからといって「じゃあ英語の能力は意味がない」とはならないはずです。道具を増やして問題はありますでしょうか?1億3千万人と人々とコミュニケーションが取れることより、19億人とコミュニケーションが取れた方が良いことは明らかです。

会話の中身、いわゆる論理力や表現力といったものは、英語の学習が阻害しているわけではありません。単純に論理力や表現力を鍛える訓練(数学や小論文)が足りていないだけで、これもまた時間マネジメントの問題です。

この記事を読んでいる皆さんは、ほとんどが日本語がわかる方々です。当然、皆さんの周りにも日本語しか話さない「ネイティブ日本人」が多くいると思います。そのネイティブ日本人全員が、日本語で論理的に会話をし、多様な表現を身につけているでしょうか。皆様のまわりでも「何言っているかわからない日本語」を使う論理力や表現力の乏しい人がいるのではないでしょうか。

その人たちは、英語学習に時間を取られすぎて論理力や表現力が身につかなかったのでしょうか。おそらく答えはNoです。

これもまた、単純に論理や表現を学んでこなかったからであり、英語学習の影響とは思えません。日本語が中途半端であるのは、英語学習のせいではなく、単純にその人の勉強不足が原因です。

そもそも、世界には複数の言語を身につけているマルチリンガルの人が6割以上いると言われています。その世界の6割の人々全員が、モノリンガルの人より論理力や表現力が乏しいのでしょうか。

論理力や表現力は、英語とは関係がありません。

英語の学習を言い訳にしない姿勢が大切

結局は、英語の学習も英会話の練習も、ピアノやスイミング、算数やプログラミングと同じ、1つの能力を磨く行為に過ぎません。もちろん、しっかりと伸ばすためには、先生やコーチに任せっぱなしでは不可能であり、親のサポートが必須です。世界で活躍しているスポーツ選手は、幼少期に保護者の厚いサポートがあったことは皆さんもご存じでしょう。英語学習も同様です。

「英語だから」と構える必要はありません。やる気を伸ばし、精神的なサポートをしっかりと保護者が行えば、ちゃんと世界で通用する能力が身につきます。

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